2025年11月、コンフォートQうめだ本店にて、カール・ハンセン&サンによるトークイベント「時を超えて愛されるカール・ハンセン&サンの家具づくり」を開催しました。
当日は、カール・ハンセン&サンより䕃山氏を迎え、ブランドの哲学やものづくりの背景、そして名作家具がなぜ世代を超えて愛され続けるのかについてお話しいただきました。

イベントは、ブランドを象徴する一脚「Yチェア(CH24)」の紹介からスタート。1950年の誕生以来、今日まで生産され続けているこの椅子は、北欧デザインの象徴的存在です。
カール・ハンセン&サンの歴史、伝統的なクラフトマンシップ、そしてデザインと実用性を高次元で両立させる思想。単なる名作紹介に留まらず、なぜこの椅子が70年以上も選ばれ続けているのかが、丁寧に紐解かれていきました。
Yチェアについて詳しく紹介している特集記事はこちら
会場でひときわ注目を集めていたのが、カール・ハンセン&サンジャパンの職人によるペーパーコード編みのデモンストレーション。日本にわずか4人しかいない職人の手仕事を、間近で見られる貴重な機会です。トークと並行して進む編みの工程を、参加者の皆さまは食い入るように見守り、途中には実際に座面編みを体験する時間も。「見る」「聞く」だけでなく、「触れる」「感じる」ことで、Yチェアの価値がより立体的に伝わるひとときとなりました。
トークの合間に進捗を確認しながら、参加者の皆さまにも座面編み体験をしていただくなど、体験型のプログラムも大いに盛り上がりました。

Yチェアに欠かせない素材、ペーパーコード。樹脂を染み込ませた紙を縒ったこの素材は、第一次世界大戦中に誕生し、1920年代から椅子に使われるようになりました。均一な品質、しなやかさ、そして耐久性。見た目の美しさだけでなく、長時間座っても疲れにくい快適さが、北欧家具で長く愛されてきた理由です。実際に編まれていく様子を見ることで、一本一本のコードが、確かな張りと緊張感をもって座面を形づくっていることがよく分かります。
デンマークを代表する家具デザイナー、Hans J. Wegner(ハンス J.ウェグナー)。“マスター・オブ・ザ・チェア”と称され、生涯で約500脚もの椅子を生み出しました。ウェグナーがカール・ハンセン&サンのためにデザインした5脚(CH22・CH23・CH24・CH25・CH26)のうち、CH26を除く4脚は1950年に製品化。CH26は、オリジナルスケッチをもとに2016年に初めて製品化されています。
現在、ウェグナー作品の約7割の製造・販売権をカール・ハンセン&サンが保有しているという事実も、ブランドの信頼性を物語ります。

午前の部では、デモンストレーションによって90分間で一脚のYチェアが完成。編みたての座面は、驚くほどパンッとした張りがあり、凛とした佇まいを見せていました。
一方、店頭で長年使われてきたYチェアの座面は、しなやかに体を受け止めてくれます。Yチェアは、使う人の体に合わせて育っていく椅子。座るほどに、自分だけのフィット感が生まれていきます。
午後の部では、完成した座面をカットする工程も公開。普段なかなか目にすることのない瞬間に、会場には静かな緊張感が漂いました。

カットしたペーパーコードを、

枠から外し、

ボソッと落とせば枠組みだけの状態に。
イベントでは、ソープ仕上げのメンテナンス方法も実演付きで紹介されました。固形石鹸やスポンジを用いた、日常生活に無理なく取り入れられるケア方法です。お気に入りの家具を美しく保ちながら長く使い続けるための知識は、参加者の皆さまにとって大きな収穫となったようです。


日々のお手入れ方法だけでなく、急遽行われた「醤油をペーパーコードに垂らし、その汚れを落とす」という実演では、参加者の皆さまはスタッフとともに、ドキドキしながらその一瞬を見守りました。

自然乾燥が完了するまでお待ちいただく時間はありませんでしたが、泡で洗うことによって汚れは次第に薄れ、適切なケアによって美しさを保てることを実感していただける場面となりました。
デザイン、素材、職人技、そして使い手との時間。今回のイベントは、カール・ハンセン&サンの家具が単なるインテリアではなく、人生に寄り添う存在であることを改めて実感できる一日となりました。
ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。今後もコンフォートQでは、家具の奥深い魅力を体感できるイベントをお届けしてまいります。
