北欧家具の話になると必ず登場するYチェアは、数あるダイニングチェアの中でも不動の人気を誇ります。1949年に巨匠ハンス J. ウェグナーがデザインして以来、70年以上にわたり世界中で愛され続け、日本ではデンマークに次ぐ販売数を記録しています。

背もたれの特徴的なフォルムから、日本では「Yチェア」の愛称で親しまれていますが、海外では正式名称である「ウィッシュボーンチェア」と呼ばれることが一般的。
Wishbone(ウィッシュボーン)とは?
鳥の胸にあるY字形の骨のこと。欧米では古くから、ウィッシュボーンを二人で引っ張り、折れた長い方の骨を取った人の願い(wish)が叶うという言い伝えがあります。そこから「願い(wish)の骨(bone)」という意味で、Y字の胸骨がWishboneと呼ばれるようになりました。
多くのインテリアショップや雑誌で取り上げられるYチェアは、“いつかは迎えたい一脚”として人々の心をとらえ、今も憧れの定番として変わらぬ支持を集めています。なぜYチェアはこれほどまでに特別なのでしょうか。

Yチェアに座るとまず気づくのが、横方向の開放感です。アームは十分な長さを持ちながら、座面の間が大きく開いているため、座った状態での動きを妨げません。横に体をひねったり、テーブルから物を取ったり、姿勢を変えたり。どの動作もスムーズに行えます。
前脚の上端は丁寧に丸く削り出されており、触れても角を感じず快適です。こうした細部の仕上げは、座ったときの安定感と心地よさにもつながっています。
使い方を指定しない柔軟さ
一脚で置いても絵になり、オブジェのような存在感を放つYチェア。一方で、アイコニックな形状でありながらも空間にすっと馴染む柔軟さも備えています。過度に主張せず、それでいて確かな個性を感じさせる。この絶妙なバランスが、魅力のひとつとなっています。

エイジング家具としての魅力
使い込むほどに風合いが増し、経年変化(エイジング)を楽しむことのできる家具。Yチェアもそのひとつです。ペーパーコードは使用とともに程よく沈み、座る人の体にやさしく寄り添うように変化していきます。 木部は光や湿度を受けて少しずつ深い色味へと育ち、年月とともに豊かな表情を帯びていきます。
新品の美しさだけでなく、日々の使用が生み出す変化を楽しむことができるのです。
豊富なカラー展開

カラー塗装タイプもあり、グレー、ブラック、ナチュラルホワイトなどの落ち着いたトーンから、オレンジレッド、オリーブグリーンなどのアクセントになる鮮やかな色まで、多彩なバリエーションが揃っています。従来のナチュラルな木の仕上げに加えてモダンな色合いも選べるため、空間の雰囲気や好みに合わせてインテリアに個性を加えることができます。



シックな色合いでどんな空間にも上品なアクセントを添えるブラックペーパーコード仕様も。使い込むほどに艶と深みが増し、木部とのコントラストがいっそう美しく引き立ちます。

Yチェアは現在も、背もたれの曲線加工やペーパーコードの編み込みなど多くの工程を手作業で行っています。それでいて日常に迎えやすい価格を実現できているのは、クラフト品質と効率的な製造体制の両立によるもの。高い耐久性を備え、長年使い込むことでその価値をじっくりと実感できます。
14のパーツで構成された合理的な構造も、長く使える名作として選ばれる理由のひとつ。初めての“良い椅子”を検討中の方にもおすすめしたい一脚です。

2024年にはウェグナー生誕110周年を記念して、お子様向けモデル「チルドレン・Yチェア」が発売されました。3歳から使用可能で、名作デザインをそのまま小型化。オリジナル同様に14パーツ・100以上の工程を経て手作業で製作され、ペーパーコードは33%細くするなど細部まで丁寧に作られています。

毎日のコーヒータイムや家族との会話など、いつもの時間が少しだけ、いつもよりも心地よく感じられる。その積み重ねが暮らしの質をそっと底上げしてくれます。Yチェアは、そんな日常に静かに寄り添いながら長く価値を育てていける一脚です。
これからの季節、お気に入りの椅子と過ごす時間を迎えてみてはいかがでしょうか。