部屋の中、はたまたお店の中を見渡してみて、おそらく木製の家具が一つも見当たらない、なんてことは稀でしょう。それほどに身近な素材なのにも関わらず、お手入れの仕方を知っている人はごく少数。
この機会に、日々がんばっている木製品をいたわってあげましょう。
今回は飛騨産業株式会社 西日本卸事業部の佐藤さんにお話をうかがいました。
家具を長持ちさせるには、普段の汚れや水分をきちんと除去することが大切です。
できるだけ柔らかい布で、こすりすぎないように乾拭きしてください。
こすりすぎると、その部分だけテカってしまったり変色してしまう可能性があります。
ショールームで展示されているアームチェア。
よく触れるアームの先(てのひらが当たる部分)はテカリが出ている。
左と同じアームチェア。
あまり触らないアームの上部は、さらっとセミマットな質感が保たれている。
乾拭きで落ちない場合、水でぬらしてかたく絞った布でふき取ります。それでも取れないひどい汚れは、中性洗剤を約30~40℃のぬるま湯で100倍ほどに薄め、かたく絞ってからふき取ってください。
どちらの場合も最後は乾拭きで、水分が残らないようにしてください。
→ウレタン塗装は意外とデリケート。水分と擦りすぎに注意。
できるだけ早く乾いた柔らかい布でふき取ってください。そのまま長時間放置すると塗膜のはがれや木材の変形の原因になります。
木材は家具になった後も水分を吸収・放出します。水分が残っていると、木材の割れや反り、それによって塗膜が割れる、はがれるなどの可能性があります。
→飛騨産業のウレタン塗装は、木の質感を最大限に生かすため、セミオープン仕上げが多い(一部製品はクローズ仕上げ)。
コーティングしてあっても染み込むので気を付けましょう。
(各メーカーによって塗膜の種類や厚さは異なります。)
使用しないでください。これらを使用すると、塗膜表面を傷つけて変色したりはがれたりする可能性があります。
→塗膜の表面はこまかく凸凹しています。化学ぞうきんで擦るとこの凸凹がなだらかになっていき、テカリのようになります。
質感の変化が手垢や油分が原因なら、日々のお手入れと同じく水にぬらして固くしぼった布、もしくは薄めた中性洗剤でぬらして固くしぼった布でふき取ってください。
手垢や油分ではなくウレタン塗装の特徴で、よく触れる箇所や日々お手入れをすると、塗膜の表面が滑らかになりツヤを帯びてきます。それは経年の変化ですのでそのままお使いください。
→日々の使用やお手入れのテカリは必ず起こります。長年の使用による味わいですので、そのまま楽しみましょう。
擦り傷などで塗膜がはがれた場合は、ホームセンターなどで販売している家具補修材で目立たなくすることが可能です。
ホームセンターなどで売られている傷隠しの補修ペン。先がフェルトペン状や筆ペン状になっているものなど、いろいろな種類がある為、好みの使い心地を選べる。
また打痕など、凹んでいる箇所は同じくホームセンターなどにあるパテで埋めて着色すると目立たなくなります。
広範囲にわたって傷や凹み、塗膜のはがれがある場合は、購入した品物のメーカー工場にて再塗装修理することがおすすめです。
(材質によって修理ができない場合がありますのでメーカーへお問い合わせくださいませ)
→浅すぎる傷は、塗膜にはじかれてうまく着色しないので注意。 ちなみに、佐藤さんのようなプロの方たちは「カラーチック」という専用ツールを使うそう。
プロユースの「カラーチック」。絵の具のような形状で、シンナーで溶いて色を混ぜ合わせて木の色に合わせていく。まさにプロの技だ。
定着してしまったシミは洗剤などでは落ちません。メーカー工場での再塗装修理がおすすめです。
汚れを放置すると塗膜に定着してしまいます。また、塗膜がはがれて木部とのあいだに空気が入ってしまうと白く濁ったようなシミができます。
どちらも日々の使い方で予防していきましょう。
→再塗装は無垢材、厚めの突板なら可能。どのような素材でできているかはメーカーへの問い合わせが必要。
天然木の場合、水分や紫外線などと木材内部のタンニンなどが反応して経年変化を起こします。
例外もありますが、
・ホワイトオーク材やブナ材などの色の薄い木材 → 濃く変化
・ウォルナット材やチェリー材などの色の濃い木材 → 薄く変化
このような変化がよく見られます。
ショールームの窓際に陳列されているチェリー材のトレイ。
日光を浴びていない裏側は元の濃い色が保たれている。
左と同じトレイのおもて面。
日当たりの良い陳列棚のため、直射日光の影響でチェリー材の色がかなり薄くなっているのがわかる。
直射日光がよくあたる場所では、変化も大きくなります。
これらは自然な変化ですから、家具の味わいとして楽しみましょう。
(メーカーによっては、変色の起こりにくい塗装を採用している場合もあります)
→伸長式やバタフライテーブルなど、普段隠れているところと色の差ができてしまうことがあります。定期的におもてに出してあげましょう。
油性の汚れは基本的に取れません。材質によっては再塗装修理でお直しすることができますので、メーカーにご相談くださいませ。
→頻繁に汚れがつく場合はビニールマットもおすすめです。
ただ、ビニールマットは木の自然な放湿・吸湿を妨げてしまうので、寝ている間はマットをはずすなどの工夫をしましょう。
基本的には大丈夫ですが、表面に傷があった場合、塗膜と木材の間に入り込んで、はがれたりシミの原因になったりしますのでご注意ください。
→水よりアルコールのほうが塗膜の間に入りやすいので、目立つ傷がある場合は気を付けましょう。
かならず鍋敷きなどを敷いてください。
じかに置いたところの塗膜がはがれてしまったり、白く濁ったりしてしまいます。
→木の中の水分が一気に蒸発して塗膜とのあいだに噴き出し、塗装がはがれて白く濁ってしまいます。
熱いものは厳禁です。
普段の生活で無意識にやりがちなのが、加湿器や暖房などの影響がダイレクトにあたる場所に木の家具が配置されている状態。
インテリアや動線を考えると仕方のない場合もありますが、過剰な湿気・行き過ぎた乾燥は、やはり木への負担になります。
なるべく直接的に影響のない場所を考えてみてくださいね。
次回は「オイル塗装編」です。
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木製家具のお手入れコラム 目次(全3回)