INTERIOR

2022.11.22

柏木工と木のはなしPart.3
工法編


家具の歴史は木から始まったといっても過言ではありません。
切り株を椅子の代わりに使い始めたときから、ありとあらゆる加工の技術が発達し、今に至ります。
家具に見られる技法・工法は、少しでも丈夫でより快適に、そういった人々の思いの結晶なのです。

《 曲木 》

19世紀の半ば、ミヒャエル・ト―ネット*がNo.14チェア**を発表、この曲木技術は世界中に広まりました。
それまでは太い角材から切り出して形をとっていく方法しかなかったため、曲木の軽くて丈夫な椅子は画期的。爆発的に普及していったのです。

今回お話をうかがった柏木工でも、曲木技術を用いたチェアを見ることができます。
例えば柏木工の中でとても人気のある「シックチェア」。この背板はウォールナットの厚い一枚板を、3次元に曲げて作られています。
ウォールナットは広葉樹の中では粘りが少なく、タモやブナに比べて曲げにくいと言われています。蒸し方や曲げ圧力などの工夫を重ねてできた、こだわりを感じる名品です。

*ト―ネット社の創業者であり、曲木技術の生みの親。
**ト―ネットがデザインした曲木を用いた椅子で、それまでの椅子に比べ圧倒的な軽さと安さを実現し、大ヒットした。

柏木工と木のはなし_分厚い無垢のウォールナットが特徴の「シックチェア」

分厚い無垢のウォールナットが特徴の「シックチェア」。

また、新作の「リットチェア」は、上から見たときの曲木の流れがとても美しい椅子です。
右手アームから左手アームまで、その木目は途切れることなく曲線を描きます。

リットチェアでもよくわかるように、曲木の最大の魅力は「繊維が途切れないこと」にあります。
角材から切り出したものは、カーブをかたち作る際にどうしても斜めにカットしなければなりません。すると繊維が断ち切られ、断面が広く露出してしまいます。
割り箸もそうですが、繊維はそれに沿った方向に割れやすい性質があります。つまり、断面が多く露出するということは、何か衝撃を受けた時に、そこから割れや欠けが起こりやすいということなのです。

一方曲木で作られたものは、断面が一番端にしかありません。その分強く、また元の素材を無駄なく使用することができるのです。

柏木工と木のはなし_新作の「リットチェア」。背が曲木で作られており、とても軽いのが特徴
柏木工と木のはなし_ケイ-ウィンザーチェアの背は曲木と削り出しを組み合わせて作られている。アーム部は削り出しで、赤い破線の通り、木目がつながっていない様子がわかる

(左)新作の「リットチェア」。背が曲木で作られており、とても軽いのが特徴だ。アームの端から端まで、木目が通っている。
(右)ケイ-ウィンザーチェアの背は曲木と削り出しを組み合わせて作られている。アーム部は削り出しで、赤い破線の通り、木目がつながっていない様子がわかる。しかし、割れや欠けに強くするため、木目が内側へ向くよう設計されている。

《 ホゾ・ダボ 》

ホゾ継ぎは、木材を組み合わせるために一方に穴をあけ、もう一方にはそれに合う突起を作って組む方法です。家具だけでなく、家屋の工事の際にもよく見られる工法です。
そしてダボというのは、木材同士をつなぎ合わせる際に、ずれないように挿し込む小さな木や石のことで、挿し込まれる穴の方をダボ穴と呼びます。こちらも家具・家屋でよく見られる工法です。
柏木工では、このホゾ継ぎとダボを一緒におこなう「ホゾ・ダボ工法」で椅子の強度を上げています。
ダイニングチェアの座面前側は、大きく負荷がかかり強度が特に必要とされるところです。
そこで、ホゾ継ぎした椅子の脚と座面のフレームを、さらにもう一方のフレームをダボとして挿し込むことで引っ張りに強い、抜けにくい継ぎへと進化させています。

柏木工と木のはなし_向かって左側にホゾ構造、右側の木にダボを施している。組み合わせることで、さらに抜けにくく強度が上がる
柏木工と木のはなし_チェアの前脚にホゾ・ダボ構造を採用。常に大きな負荷のかかる前脚部分を強化し、長く使えるチェアを目指す

(左)向かって左側にホゾ構造、右側の木にダボを施している。組み合わせることで、さらに抜けにくく強度が上がる。
(右)チェアの前脚にホゾ・ダボ構造を採用。常に大きな負荷のかかる前脚部分を強化し、長く使えるチェアを目指す。

《 くさび打ち 》

木と木を組み合わせた後のすきまを埋めるものを「くさび」と呼びます。 木を組むとき、一方に穴をあけ、もう一方の木を挿し込む、という方法が広く行われます。昔ながらの木造住宅では、柱の一部に穴をあけそこに貫を通す、ということも一般的です。
その際に、貫を通した穴にはすきまが開いています。そこに打ち込むのがくさびです。

木は呼吸します。湿度や温度に合わせて動きますから、貫とくさびは共に動きながら伸縮し、ますます抜けにくく調整されていきます。

柏木工と木のはなし_SENSUサイドテーブル。デザイン性のある脚が天板まで貫くデザイン
柏木工と木のはなし_天板を貫いた脚の中央にくさびが打たれている

(左)SENSUサイドテーブル。デザイン性のある脚が天板まで貫くデザイン。
(右)天板を貫いた脚の中央にくさびが打たれている。(白破線の部分)

《 くさび打ち 契り 》

木と木をはぎ合わせる際に、取れないようにリボン型の木片を打ち込みます。これを「契り(ちぎり)」と呼びます。
以前は今ほど良い接着剤がなかったため、木と木をはぎ合わせても年月が経つと取れてしまうことが往々にしてありました。
また、一枚板を長年使用していると、環境(湿度や温度の変化、冷暖房など)によっては割れや亀裂が生じてしまいます。放っておけば悪化してしまいますので、そのようなときにこの契りを埋め込みます。
この契りは無垢の一枚板テーブルなどでよく見られます。
ただ、最近では接着技術の発達もあり、実は必ずしも入れなくてはならないものではないのです。なので、見た目の面白さからあえてデザインとして契りを入れるということもしばしば。
話をうかがった柏木工で展開している「スーパープレミアムテーブル」でも、くさびの有無が選べるようになっています。

近年家具作りにおける加工技術は急速に進化を遂げ、早く、そして安価に家具が作れるようになってきました。
しかしながら、ご紹介してきた技法・工法を用いなくては達成し得ない家具や作品が多くあるのも事実です。

それら技術を守り伝えながらそれに胡坐をかくのではなく、この変化の激しい時代、よりよい作品を企画・製作していくクリエイティブネスと継続的な努力が、今の家具ブランドには求められていると言えるでしょう。

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柏木工と木のはなし 目次(全3回)

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