2024.06.05
「書と触れ合う機会のなかった人たちにも、ひとつのアートとして、かしこまることなく楽しんでもらえる、そんな作品を制作していけたら。」
今回お話を伺ったのは、書家・名方亜希さん。
現在、国内外の展覧会やグループ展にて作品を発表。企業や店舗からはアートワークやロゴ、アパレル用デザイン、命名書、インテリア書まで様々な依頼を受け作品を提供するなど、積極的に活動をしています。
名方さんが書を始めたのは幼稚園のとき。とても仲の良いいとこのお兄さんから「今日からはもう遊べないよ」と言われ驚いた名方さんは理由を尋ねます。理由は書道教室に通うから、でした。「それなら私も!」こうして、名方さんと書のご縁が結ばれることとなります。
朗らかに笑う名方さんですが、昔は引っ込み思案だったそう。自分の感情を吐き出すひとつの手段が書となったのです。
日本の伝統文化「書」の中に遊び心を散りばめる名方さんの発想力は、沢山の人たちとの出会いから来ていると言います。そんな名方さんらしい言葉が今回のテーマとなりました。
前述した通り、名方さんの願いは、見る人それぞれが好きな様に作品を感じてくれること。ただ、書く人の内面や感情を映し出す書だからこそ、制作秘話なども気になるところです。
新しい作品の中からいくつかをご紹介いたします。
左:「空1」2024年 自家製墨、画仙紙 390×270mm 77,000円(税込)
右:「空2」2024年 自家製墨、画仙紙 390×270mm 77,000円(税込)
今回の展示商品で同じ漢字、同じ大きさで制作された「空」。それぞれ全く雰囲気が異なります。「今自分が見ている空と、遠く離れた別の場所で見ている空は、同じ空でも見え方が違う。だからふたつ書きたいなと思いました。」
それぞれの場所は天気が違うかもしれないし、国が違えば時間も違うかもしれません。そんなふたつの場所のふたりを想った『空』は、書としても抽象画としても楽しめます。
「心」2023年 自家製墨、画仙紙 455×606mm 95,700円(税込)
「心」はバランスの難しい漢字。この作品が繊細でありながらもどこか軽やかに感じるのは「心がふわっとなったとき」に書かれたから。見ているといつの間にか微笑んでしまっているような、優しい印象を受ける作品です。
左:「LOVE2024/1」2024年 自家製墨、画仙紙 242×333mm 44,000円(税込)
右:「LOVE2024/2」2024年 自家製墨、画仙紙 242×333mm 44,000円(税込)
シリーズ作品「LOVE」より、柔らかくも生命感を感じる『LOVE』と、ピコンッと音が聞こえてきそうな『LOVE』が登場。
「書は音楽とも通じています。」リズムを感じながら書かれることによって、作品の息遣いがよりこちら側に伝わってくるのではないでしょうか。同じテーマの中で同じ文字を描いたとしても、作品の表情は様々です。
「再」2024年 自家製墨、画仙紙 200×200mm 33,000円(税込)
今にもトコトコ歩きだしそうな『再』。
どこか小鳥のようにもロボットのようにも見えます。身近な場所に飾りやすいサイズで、皆さまのリスタートを可愛らしく後押ししてくれます。
「書から離れたこともあるけれど、いつの間にかまたご縁が繋がりました。」と話す名方さん。書を辞めたいと思ったことはないそうで、日課としていた臨書を長年極め、2022年より書家・祥洲氏に師事。大きな変化となりました。
照華書道教室
名方さんが開く教室には、幼稚園から高校生、大人までの様々な年代の方が通い、軸や花を飾ったりお香を焚くことで、生徒の皆さんを出迎える特別な空間作りをしています。「ふとした時に、いつか教室に通っていたことを香りで思い出してくれたりしたら嬉しいな。」と笑顔を見せてくださいました。
日本の伝統文化と考えると少し難しく感じてしまうかもしれませんが、見て書いて楽しくて、何だか心が動かされて、ただ純粋に感じる「書」の世界。
今一度、新しい書の魅力に触れてみませんか?
名方亜希
5歳より書を始める
同志社女子大学卒
2015年書道師範取得
大阪府豊中市にて照華書道教室を開設
2022年より大河ドラマ「軍師官兵衛」題字揮毫などでも知られる書家 祥洲氏に師事
伝統的表現を基盤とした漢字・仮名、そして現代美術まで幅広いジャンルを学び、本格的に書家として活動中。