ANDON 縦枡露地行燈
アイテムカテゴリ
照明 / テーブルスタンド
85,800円〜(税込)
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⼗三ショップ  -
阪急うめだ本店7階  -
展示の状況は時期によって変わります。詳細はお問い合わせください。
ずっと昔、ひっそりとした旅館に泊まった時、部屋の片隅に静かに佇んでいた行燈(あんどん)に気が付いたのは夕暮れ時に火が灯された時でした。行燈の和紙を通したふんわりとした柔らかいあかりが気分を癒してくれたように思います。「日本のあかり」というと提灯(ちょうちん)のイメージがありますが、行燈は江戸時代の頃から日本人の生活の中で多く使われており、日常生活のあかりとしては、生活の道具の中心を成していました。

その日本人の生活のあかりを現代の空間の中にもう1度取り戻すことは出来ないかとずっと考えて来ました。しかし、古い伝統のあるものを現代のものに置き換えることほど難しいことはありません。形式やしきたり、基本的な作りや素材などの伝統というルールがあり、そのルールを逸脱せずに、現代に合う新しいものを作るには、先ずは古いもの、伝統や作り、素材をしっかりと守る必要があります。その条件をクリアした上でないと、日本の伝統を継承した新しいものにならないと考えました。

菜種油や蝋燭のあかりを使った行燈や提灯を「灯火器」と呼びます。その言葉は日本的で情緒的な響きを持っており、そんな言葉に合う佇まいの現代の灯火器となる「行燈」を目指しました。そのような行燈を製作する上で大切に考えた事がいくつかあります。ひとつは、室内に詩的な陰翳をもたらす柔らかいなあかりを作り出すために、伝統の本質に根差した手漉き和紙を使うことです。

美濃和紙といっても機械で作られたものから、全ての工程を手づくりで行うものまで幅広くあり、今回は美濃和紙の伝統を実直に守りながら、手漉き和紙を作り続けている職人の和紙を使わせてもらいました。和紙の原材料の中でも最高級の那須楮(なすこうぞ)を使い、美しい和紙になるまでの多くの工程を根気よく、長い時間を掛けて丁寧なものづくりを行っているコルソヤードの澤木氏に、私たちの製品のための美濃和紙を漉いてもらいました。火種となった菜種油や蝋燭の光量は、現代の照明の50分の1くらいの明るさだったようです。和紙越しの炎を再現するために、フィラメントを使った従来型の白熱球を調光して光量を落とし、消滅するほんの少し手前の仄かな赤い炎のようなフィラメントのあかりが行燈には欠かせません。

携帯して移動することが出来る充電式や消費電力を抑える現代の流れに逆行することになりますが、フィラメントの白熱球で調光器を使い、行燈のあかりのボリュームを調節できて、炎の光のように和紙を透過する柔らかな温かみのある灯を何よりも大切にしました。使う場所や用途によって光の量を調節することで読書灯としても、室内の間接灯としても、玄関や廊下、ベッドサイドなど様々な場所で使えるあかりを優先しました。もうひとつは、多くの行燈の資料や古道具屋から探してきた実物の行燈から、私たちが作るべき現代の行燈の在り方として、木材を使用した製品とすることです。

名古屋行燈のような鉄のフレームの行燈も魅力的な行燈の在り方だと感じましたが、現代の居住空間の中で自然な佇まいとして空間に馴染む素材として、無垢の木材を使用することにしました。元々行燈は電源コードやケーブル、調光器などを入れる場所などない、とてもシンプルな構造で出来ています。そこに電源ケーブルやソケット、調光器が露出しては美しい行燈にはなりません。そこで、2本脚の行燈の底の高さ30ミリ程の中に調光器をインセットして固定する必要がありました。調光器を収める部分だけ杉の無垢材を手作業で薄く削って寸分の逃げもなく調光器を行燈の台の内部に収めています。

また、その台から立ち上がる白熱球のソケットまでは、10ミリ角の杉材2本が火袋や行燈の本体を支えています。その10ミリの角材の内部をケーブルが通るような道筋を削り、ケーブルを敷設した上から杉の無垢材で蓋をして全てのケーブルが露出しないように製作しています。新建材は一切使用せず、杉の無垢材を昔の行燈と同じ指物師が金具や石油系接着剤も使用せずに、昔ながらの工法によって丁寧に鉋(かんな)で表面を仕上げ、全ての工程を手作業で行うことで、この行燈に現代へ受け継ぐ息吹が宿りました。この指物師の仕事は現代の効率優先のものづくりとは逆行した手間を掛けたものづくりですが、それ以上の価値を生み出しました。

きっと、数十年、百年を超えて、時間と共に本体の木組は味わいを深めた美しい表情を増していくことでしょう。この繊細で高度な仕事は、2人の親子2代に渡る腕のいい指物師の存在がなければこの行燈を完成させることはできませんでした。構造となるフレームは極限まで細くし、現代の空間の中で杉材の繊細な線と手漉き和紙が重なることで、全体の存在感から重々しい重量感を軽減し、現代のどのような生活空間に自然に佇む姿にすることが出来ると思います。行燈のあかりがあることだけで、懐古的な趣ではなく、その空間に新鮮な現代の日本の空気が漂うことを期待しています。
アイテム名 ANDON 縦枡露地行燈 / アンドン
ブランド名 TIME & STYLE / タイム アンド スタイル
サイズ 幅:213 奥行:213 高さ:385 (mm)
素材 本体:和紙、杉
バリエーション 和紙:無地/矢鱈縞/流水
資料
納期 国内生産品